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大奥の女性たちが暮らした「お部屋」事情

「将軍」と「大奥」の生活㉘

■ペットまでも政治的な事情で利用されていた?

 

 また、御台所が使っていた「御湯殿」は間口2間奥行2間3尺(約16・5平方メートル)で、壁も天井も板の間も檜でつくられていた。竹箍(たけたが)で締められた白木の丸桶(楕円形)の湯船の横には、栗材(くりざい)でつくられた4尺(約1・2m)四方の台が置かれ、御台所はその上に座って体を洗い流した。その前には柄杓(ひしゃく)を添えて冷水と熱湯を入れた小桶が2つ置かれており、これで湯加減の調節をしたという。

 

 さて、江戸では犬・猫・小鳥・金魚・ハツカネズミなどの飼育が流行っていたが、大奥でもペットの飼育は人気の娯楽であった。中でも狆(ちん)や猫が好まれていたようで、天璋院(てんしょういん)のペットの猫はミチ姫・サト姫という。

 

 一方、御年寄など大奥権力者の飼っていた猫の子は、生まれる前から里親希望者が殺到した。もちろん、政治的な事情によるものである。

 

 とはいえ、里親の負担も少なくはない。メスならば雛祭りを、オスならば端午の節句人形を購入して祝わねばならないし、子猫の誕生日には赤飯を炊き、おもちゃなどの子猫へのプレゼントを持ってきた奥女中を招いて料理を振舞わねばならないのである。どうやら、マウンティングの道具に使われてしまったようだ。ペットたちが幸せだったことを祈るばかりである。

女中たちは外出が厳しく制限されており、余程のストレスがあった。その生活のなかで息抜きとして人気を得たのが、飼育を許されていたペットである。歴代の将軍たちが動物好きだったことが一因でもあった。中でも狆(ちん)と呼ばれる小型犬が人気で、たびたび錦絵に登場する。13代将軍・家定(いえさだ)は犬嫌いだったため、その正室・篤姫(あつひめ)は猫を飼った。エサ用のドジョウやかつおぶしは当時高価であり、その金額は年間約25両にもおよんだという。それだけ寵愛していたことがうかがえる。

監修・文/小沢詠美子

『歴史人』202110月号「徳川将軍15代と大奥」より)

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